インタビュー
軽金属の鋳造、機械加工を行い輸送機器エンジン部品や半導体製造装置部品、ロボット部品を 世に送り出している TANIDA 株式会社様に、事業概要やモノづくりへのこだわりについて伺いました。
- TANIDA株式会社
- TANIDA株式会社 代表取締役社長 駒井 公一様
- 1962年に有限会社として谷田銅合金鋳造所を創業。以来、製造の限界を超えるため様々な認証の取得や他社に先立った3Dプリンタの導入など、新技術の開拓に余念なく挑み続ける。近年では航空機宇宙・防衛産業にも参入、注力しており特殊工程の認証を数多く取得、3Dプリンタと独自の差圧鋳造技術により大手海外メーカーとも取引を行っている。
- 本社工場:〒920-0209 石川県金沢市東蚊爪町ラ 28-2
http://tanida.co.jp/ja/
事業概要を教えてください。
主な事業として軽合金の鋳造・機械加工を行っており、製品例としては輸送機関系や半導体製造装置、ロボット部品等です。近年では特に航空宇宙・防衛産業の企業としてメディアに露出する機会が多く、コロナ禍でも同部門の大幅な売上向上を達成しています。
元々の本業は鋳造で、鋳造の機械加工、熱処理、それから表面処理を行っていましたが、近年、事業領域の変革の一つとして機械設計、解析評価、そして合金開発といったエンジニアリングにも投資をしています。それに伴い、CMMやX線検査、評価などの品質管理にも注力しております。今後は、エンジニアリングと評価の実証というところの付加価値を更に高めていきたいと考えております。
また、昨年社名を変更し、谷田合金株式会社から現在のTANIDA株式会社となりました。というのも、社名に「合金」とつくとどうしても鋳物屋のイメージが強く出てしまうためです。私たちとしては、鋳物に拘らない、機械加工に拘らない、そしていろんな分野で事業を拡大していきたいという想いがあり、TANIDA株式会社へと社名変更しました。
強みや特色を教えてください。
先ほど申し上げた事業拡大のための投資の一つとして、人員的な投資にも力を入れています。モノづくりに直接的にかかわる作業者だけでなく、CAE、CAD、CAMを扱える鋳造の技術員、そして航空宇宙産業にとって非常に重要な専門家集団である特殊工程員の増員に注力しています。
また、当社では2008年より3Dプリンタを導入しています。航空機のエンジン部分にあるギアボックスには、鋳造素形材を精密に加工した様々な製品が搭載されていますが、これらは非常に複雑な作りをしているため、日本が得意とする金型やダイカストでは成り立ちません。この部分は砂型鋳造と機械加工による製法が今後も続くだろうと考えられており、ニッチな分野であるため参入障壁が高くなっています。しかし当社は3Dプリンタの技術と、独自の鋳造技術である差圧鋳造を組み合わせることにより製造限界を超え、他社よりも早く合理的な鋳造を実現しました。加えて、当社は砂型鋳造や溶接などの様々な特殊工程の全てにおいて国際認証を取得しています。これらの認定審査は非常に厳しく、また材料試験やX線といった検査系の認定が多いです。そのためこの分野において東京精密さんと関わることがとても多く、今後もお付き合いしていくことで高度化していけるのではないかと考えています。
これらの技術や取得認証から、海外大手のお客様にもご満足いただき、直接契約を締結していただけるほど高品質な製品を送り出しています。
コーポレートスピリッツ「 製造の限界突破 」 について詳しく教えてください。
社内でモットーとして強く掲げており、従来の工法では超えられなかった製造の限界を少しでも超えたいと考えています。その為に、鋳物を主な事業としてはおりますが「鋳物にこだわらないこと」を意識しています。航空機部品についても砂型鋳物がまだまだ浸透していない反面、樹脂で作れないかな、なんて考えているんですよ。少しでも限界を超え、先へ行くために、鋳物だけにこだわらず“モノづくり”全体として引いて見る。こういった企業姿勢が大事だと思っています。
今後の事業展開について教えてください。
海外展開を視野に入れており、そのためにも様々な国の人材を積極的に増やしています。かなり国際色豊かな職場になってきましたが、もっと多くの人材が欲しいと考えています。
また、2022年春には多くの最新型装置が立ち並ぶ工場を設立予定です。現行の工場では三次元座標測定のCenterMax、PRISMO、SURFCOMNEXDXを既に導入していますが、新工場では大型三次元座標測定機のACCURAも二台導入させていただく予定です。ロータリーテーブル埋め込み型の装置は長年欲しかった測定機の一つのため、非常に期待しております。その他にも大型のCTスキャニング装置や最新型の大型3Dプリンタも導入予定ですので、設立の暁にはさらに良い製品を製造していきたいと考えております。
中小企業庁長官賞・産業デザイン財団賞受賞(2021年12月)
測定機器や東京精密に期待することはありますか。
これからは、測定機一台一台の精度や機能がどうというよりも、マシン同士、工場同士をいかに繋げていくかだと考えています。システムを絡めて、測定機器を製造ラインに入れ込んだり、様々な測定機器のプログラムを一つに統合したり。まさしく現在我々が推し進めているような、シミュレーション、解析、それに伴う評価、測定を連動して行えるような、そんな革新的なデジタルの繋がりがあるといいなと思います。
また、測定機器のような設備を選択する際、やはりサポート体制は極めて重要だと感じています。工場にとって、機械は止まれば止まるほど影響が大きくなりますから。とある工作機械メーカーさんはサポート体制が素晴らしく、お昼過ぎに装置が壊れたと連絡したら翌日の午前中には復旧してくれます。そのくらいのスピード感で対応してくれると非常に助かりますね。近年ではウェブでの対応が当たり前になってきたので、近い将来、ちょっとした装置不具合の問合せ等はAR技術を導入して遠隔でやりとりするというサポートにも期待しています。
東京精密より、対談を終えて
「鋳物にこだわらず、”モノづくり”にこだわる」。そう熱く語り、その言葉通り様々な分野にアンテナを張り、積極的に新しいものを取り入れ常にモノづくりの限界を超えていくTANIDA株式会社様。参入障壁が高いと言われる航空宇宙・防衛産業でのTANIDA株式会社様の大躍進は、そんな強いこだわりと高い行動力といった企業姿勢あってのことだと強く感じる取材でした。今後も発展し続けるTANIDA株式会社様に寄与できるよう、東京精密も製品開発並びにサポート体制の強化等、努力を続けてまいります。